「さちたま」覚書
誰が最初に呼び出したか
わたしの名前は上原さち
周りからは「さちたま」と呼ばれるようになって久しい
本名があまり好きじゃないから
もとより名前を呼ばれるのも嫌で
自我が芽生えた頃合いから人には渾名で呼んでもらってたし
コロコロ名前を変えることを選べるインターネットの匿名性が好きだった
髪を切ったり、ピアスの穴を開けたりするような勢いで
ある夏の日、なんか名前を変えたくなって
それまで2年近く使っていた名前にさよならを告げることを決めた
呼びやすく、捨てやすい名前にしようと
朝、食卓に出ていた半分のバナナを見て
「ほんならさっちゃんにしよう」
そうやって生まれたのが今のわたしの原型
しばらくしてTwitterを始めて
適当に名付けたIDの割に
そこから世界は急に広がり
「先輩をちゃん付けで呼ぶの気がひける」
「ちゃん付けよりも近い友人になりたい」
だなんて言葉から
「さちたま」なんて呼び方が定着して
周りの人間関係に立体感が生まれて
せっかくだから苗字もつけてもらって
「上原さち」だなんてちょっとホンモノの名前っぽくなった
12年前、「さっちゃん」という名前を選んだのはわたしの気まぐれだけど
半生近くを共にする間に周りの世界がわたしを「さちたま」さんにしてくれた
これからもみんなよろしくね