夏が駆けていく
昔のゲーセン仲間の1人と実に10年ぶりに遭遇して
ふと、若かりし頃のことを思い出した
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遠い昔の夏の終わりに
誰かが言った「花火でもやろうよ」って一言がきっかけで
当時のゲーセン仲間みんなで電車に乗って、地元の隣駅から程近い河川敷まで行って
夏の思い出作りにと手持ち花火で遊んだんだ
カラフルに煙るみんなの横顔、火花のにおい
頬に当たる夕立の粒、足元を撫でる夏草
いつもの通学路よりも河川敷はずっと近いはずなのに
すごく遠くまで来たように感じて
他に若者らしいイベントもなかった私にはたまらなく煌びやかだった
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当時のゲーセンのコミュニティは不思議なもので
同じ場所に通ってるってだけで
年齢、性別、学校/職業、果てには音ゲーの腕もバラバラだけど
本名、通う学校も、家の場所まで知っていて
日頃はもっぱらハンドルネーム呼びだけど
いつも使うお店や通う塾、歩く道が共有されていて
現実とバーチャルとが地続きになっていた
不思議なコミュニティだった
ゲーセン、というよりはショッピングモール屋上のゲームコーナーみたいなところだったけど
毎日そこに行けば誰かしらがいて
狭い店内で1台しかないゲーム機が空くのを待ちながら
ひたすらおしゃべりしたり宿題を教えあったり
時折UFOキャッチャーか何かでいらない景品を取ったりなんかして
各々の塾や習い事にバイトや門限、時には閉店時間までの時間を過ごしてた
写真の1枚もロクに残っていないような日常だったけど、確かに存在していた毎日
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進学や就職、その他諸々の理由から
あの夏の日から程なくして、コミュニティは空中分解し
いつのまにか酒も飲めば給料も貰い
夏の速さも倍以上に感じるような歳になった
私だけ、今でも変わらず同じ町に住み
ずっと代わり映えがしないなあ、だなんて思っていたけど
あの頃通ったゲーセンはもちろん
ゲーセンだと話し足りないからって時折立ち寄ったクレープ屋も
飲み物をいつも買ってた100均も
「あれ欲しいね」なんて言ってウインドーショッピングしてた雑貨屋も
いろんないらないものを物色したヴィレッジヴァンガードも
そういえば、いつのまにか、気づいたら
全部なくなっていて
思った以上に町は変わっていたことに気づいた
そして、今思えばゲーセンにいた私は
あの頃たしかに「女子高生」をしていた。