君にオムライスを
はるか昔
日本から遠く離れた小国に住んでいました
当時小学生だったので学校には通いましたが
授業内容は8割方雰囲気で判断し
こんにちは
さようなら
ありがとう
すみません
わかりません
おトイレ
たすけて 等
せいぜい100単語程度の語彙で毎日を乗り切っていました
ファービーの方がまだ喋れるレパートリーが多いのでは?
それでも普通に授業は進むので
日々静かに目立たないように乗り切っていました
ある時、1分間スピーチのテーマとして
「あなたの好きな卵料理と、その作り方を紹介してください。前の人とは被らないようにね」
というお題が出て
よりによって1番最後に発表する羽目になってしまい
ゆで卵も目玉焼きもオムレツも使われてしまった中
ない頭を振り絞ってかろうじて説明できそうなのが「オムライス」でした
玉ねぎとパプリカときのことごはんを炒めて
ケチャップとソースで味付けして
薄焼き卵で包む、
という簡単な作り方にも関わらず
「炒める」という言葉もわからないほどには説明力も語彙もないので
スピーチが終わった果てには
「そんな料理知らない」「適当にでっちあげるな」「ていうかそれオムレツじゃん、アイデアパクるなよ」
など集中砲火を受けて涙目になる始末
その中にひとりだけ
「僕、それ食べてみたいな。いつか日本に行くから食べさせてね」
と授業が終わっても慰めてくれた子がいました
男の子だったし、ほとんど話すこともなかったけれど
その時はとても嬉しかったのは間違いないです
今思えば、これこそが多様性の受容、そして優しさだよなあと思います
15年の時が経った今、検索してみたら
世界中を巡り自然や料理を語る写真ブロガーになっていました
まだ日本には来た形跡はないし
情勢が情勢だから大変そうだけど
落ち着いたら1度日本に来てみて欲しいなあ
彼の幸せを願います