世界は今日も美しい

政治と野球のことは書きません。

人工知能と、ひとの可能性

申し訳程度に社会生活を営む身の上ながら

おそ松さんをリアルタイムで視聴してしまいました

ド素人ながら人工知能のありかたについて

もとい人間の可能性について深く考えさせられる回でした

感想を書き殴ります

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話の内容(抜粋)としては

無職生活を送る六つ子の元に

謎の第3セクターから「社会の底辺である六つ子を保護し浄化する」という目的を持った2台の"AI"

シャケ とウメが派遣されて

当初懐疑的な目を向けていた六つ子たちに至れり尽くせりの生活を与えることで

彼らを次々陥落させる

という展開です

 

いや、そもそも2台のAIって何?

 

自称AIに知能はあるのか

まず私は

令和のコンテキストにおけるAIというものは

人の指示を要さず自動的に役目を果たし

データによる経験や学習を通じて自動的にパフォーマンスを最適化できる存在

と認識しています

 

そもそも六つ子のの世界には、

AIをはじめとするテクノロジーはひどく不釣り合いなんですよ

「昭和生まれ」を名乗る六つ子は

末弟を除きスマホの1台も持たず

段ボール製のMacBook以外は縁のない世界

 

そこに突如転がり込んだ自称AIは

(ほぼ)なんでも六つ子の命令に対して定型文で従い

ロボットとしての完璧な奉仕をします

 

将棋や音声認識に対応しているところからも現実世界ならそれなりのスペックのAIを積んでいそうだけど

創作物というフィルターを通すと、

シャケもウメも従来のステレオタイプに沿った

「命令された内容に従う」という

目新しさのない存在のように見えて

本来「汎用型AI」が持つべき柔軟な学習能力が活かされていないように見えました

 

令和の世のフィクションでもてはやされるような"AI"はこんなもんじゃないでしょ

シャケとウメは、六つ子たちのローテクぶりにつけ込んで思考停止させるために

バズワードとしての「AI」を騙らせたナニカで

裏には堕落する六つ子を眼前にほくそ笑む黒幕の頭脳があるだけなのではないかと最初は思いました

 

人工物と倫理

ところが、2話全体を見て咀嚼しているうちに

あれ、シャケとウメはAIの振舞いとして完璧では…?と思えてきました

 

そう思えたキーポイントはいくつかありますが

ひとつ、

松野おそ松がエッチなビデオを要求した際はコンプライアンスを盾に断るのに

その前段で競馬でボロ儲けすることに関しては嬉々として対応していること

松野たちはいい歳したオトナなので、別にエッチなものを見ようが公営ギャンブルにふけろうが法の上では問題ないけれど

片方は「社会的に問題がある」と判断され

もう片方はスルーされました

なんなら社会的にはギャンブルよりもエロの方がまだ認められてるのではないかと思うんですが

シャケもウメも、倫理を図るためのデータを持ち合わせていなかったのかもしれない

 

ふたつ、

当初「社会の底辺」として判断された六つ子たちをサポートする為に派遣されたシャケとウメ

六つ子たちを「赤子と比較される程にサポートが必要な底辺」として定義づけるのは

「彼らが勤労意欲も生活力もない無職の心身健康な若者である」という要素と考えられ

当初シャケウメは六つ子たちの「生産性の低い」あり方をネガティブな概念で捉えています

 

ところが、話が進み

(一松を除く)六つ子がシャケウメのいる生活に慣れてきた頃

2体は六つ子が労働を否定し安楽を肯定する旨の発言を繰り返し、六つ子に承認を与える

 

労働を否定し、無職であることを肯定するのは

六つ子たちがこれまで見せてきた態度

彼らの言動を学習した結果、シャケとウメは工場出荷時とは異なる思想を植え付けられた可能性を感じました

 

余談ですが、数年前に

どこかの会社が、自社が作ったまっさらなAIにSNS上のニンゲンの行動を学習させて

学習内容に応じて自由にSNSを使わせたところ

ものの16時間で過激な差別主義者の魂が宿ってしまった

なんて事例がありました

高機能かつ、幅広いデータを学習できる「汎用型AI」だからこそ

意外とシャケウメを洗脳するのは楽なのかもひれませんね

 

想定内の堕落

ラスト間際に登場する意味深な施設

そこではカプセルに入り記憶を最適化する2体の姿が

一説によると、あそこから六つ子の誰かへと成り代わる展開になる

という未来予想図もTwitterでは多く見受けられました

 

いずれ成り代わることを考えると

六つ子の常識に染まり、六つ子の倫理を学習するのは

むしろ彼らにとっては好都合

 

果たしてその行動が「底辺である六つ子」のサポートになりうるのかはさておき

 

それでも六つ子は負けない

シャケとウメに骨抜きにされる他の兄弟を後目に

ただひとり異物の拒絶を明示するのは松野一松

彼は暗がりの中、シャケにもウメにも見つからないように

ただ折り鶴を折り続けました

 

折り鶴って不思議ですよね

折り鶴に折り鶴という名前が付いていなければ

誰もそれを「鶴が翼を広げた姿」だと認識することはないでしょう

そして「折り鶴」というシンボルに宿る「平和」や「希望」などの概念は

本物の鶴や、折り鶴の作り方を知っているだけでは読み取ることは難しい

そして、「鶴を折る」ことに象徴される「非生産的な創作活動」の楽しさは

自分で手を動かすからこそ味わえる部分が多く

無から有を創造するのを得手としない現在のロボットにとって最も苦手とする部分で

 

折り鶴を作り続けていく松野一松は

人間にしかできないことを繰り返すことで

静かな反逆を続けているように見えました

 

そして、AIをはじめとするロボットというのは

誰か/何かの役に立つという使命を持ち生まれます

生産性が求められない愛玩用のロボットですら「人のコンパニオンたれ」という目的を持って生まれます

 

シャケやウメにとっても「六つ子のサポート」という表向きの役目があるからにこれは例外ではなく

「役に立たない」「何も生産しない」ことを極めた六つ子たちのことを

完全に「理解」し成り代わることなんてのは

彼らが人間にでもならない限りないのではないでしょうか

 

そんな希望を持ちつつ3話を待とうと思います

あと松野おそ松くんが今回も最高にかわいかったです

来週が楽しみだなあ